第7話
ついにツアー初日の朝が来た。ここ数日とはうって変わっての晴天だ。kenは、グッズの為に朝5時半に起き、6時には家を出た。7時には会場に着き売り出しの10時までasamiの事を考えながら待っていた。ついに、販売が開始され目的のasamiのソロセットとトレーディング系のものを大量に購入した。トレーディング系は、数の割にはなかなかasamiのものが出ずsayuの物がかなりでた。恐らくライブ後に約束があるのでそのパワーなのか・・・。
しかし、kenは公言どおりその日のうちにasamiのグッズを揃える事ができ満足感に浸りながらライブの時間を待った。そして、ついに待ちに待ったライブの開始だ。1曲目は、予想通りに最新新曲の「ウーマンパワー」だった。いきなり、kenのテンションは最高点のMAXに近づいた。順調にライブは進んだがそこで問題は起きたのである。4曲目我が愛するasamiのセンター曲「涙が止まらない昼休み」だ。kenは、思わず「asami」と大声で叫ぶと同じくセンターで歌っているsayuがその声に反応したのだ。一瞬、こちらを睨んだ。sayuは、kenとの約束を楽しみにしていたのにasamiの応援をまたしても必死にしているkenに怒ったのである。その曲の後のsayuは、いつもより愛を振りまくウサチャンピースの回数も減りkenも少し反省した。ライブも後半になり「GO!愛の勝利!」では黄色い旗を振るsayuの姿に自分もその旗のように心がゆれていたんだよと強く心で叫ぶとsayuに届いたのか少しずつ元気になったように感じた。kenは、その時sayuとはエスパー関係にあるのではないかと錯覚する程だった。そして、アンコールの最後の曲「ピースオブワールド」だ。この曲はなんと言ってもsayuのウサチャンピースが連発する可能性が秘めたkenもかなりお気に入りだ。最後の最後にsayuは恐らく反省しているであろうkenに対しウサチャンピースを一度だけ返してきたのだ。kenは、何よりもその事は嬉しかった。ただ、この曲の衣装セーラー服のasamiには勝てないと思いながら・・・。比較的内容も良かったライブにkenはそこそこの満足感を感じることが出来た。しかし、その日の一番の盛り上がりは何と言っても最強曲の復活mikiの「ロマンティックイライラモード」だったに違い。公演終了後、kenは約束どおり戸田駅の改札前にある公衆電話からsayuに連絡を入れた。sayuは、少し不機嫌な声の対応でkenは心配した。待ち合わせは、駅前のファミレス「華屋」だ。sayuは時間通りにやって来た。
sayu「傘忘れたよ・・・」「うそだよーーん(笑)」
その一声でkenは、少しホッとしたのである。電話の声からして相当怒っているのではないかと不安だったのだ。
sayu「傘有難うね!ただ水が漏れてきたよ・・・」
ken「これが特徴なの」
sayu「へーヘーヘー」とkenの頭を軽くたたく。
sayu「でも嬉しかったよ。それにken君らしいし・・・」
ken「どういう意味?」
sayu「秘・密・」
sayu「でも今日は悲しかったな・・・」「だってken君たらまた今日もamamiチャンの応援なんだもん」「罰ゲームね!」
ken「罰ゲームって何?」kenは、困惑をして聞いた。
sayu「月曜日休みだから遊びに連れてって」
ken「え・え・」
sayu「だからデ・ー・ト・」
kenは、耳をまたしても疑った。
ken「本当に」
sayu「モチノロン」「それともやっぱりasamiチャンがいいの」
これを聞いたkenは夢かと思いsayuに思いっきりぶってと言う。
「バシ」物凄い音がなりkenはめちゃめちゃ痛く夢ではないと実感したのである。それは、まさしく罰ゲームではなくどう考えても勝者への最高級のプレゼントに違いない。ただ、その時目の前の相手がasamiだったらとついつい思ってしまうkenがいた。
ken「いいよ」
sayu「やったーーー」「決まりね、ボーリング・・・」
ken「相当うまいよ・・・」
sayu「私も負けないもん」
会話は盛り上がり、月曜の午後7時に渋谷のドトールで待ち合わせることにした。しかし、その時はまだここで起きる思わぬ出来事などkenは思いもしなかったのであった。

第6話
kenは、未だに初日のチケットが手に入らずとうとうツアー前日の夜になってしまった。やっぱり無理かと思っていた所に天使が舞い降りてきたのだ。オークションでやっとの思いでチケットを落とすことが出来たのである。kenは、無邪気に喜んだ。これで、ツアーの初日にasamiの笑顔を観ることが出来る。嬉しくてしょうがなかった。しかし、ここに来て大きな問題も発生した。いつもの難敵グッズだ。今回も嫌らしく発売される。asamiの物だけを揃えるだけでも相当な金額だ。今回はオークションのチケットでかなり無理をしたばかりだと言うのに・・・。しかし、asamiの事だけはどうしても譲れない。是が非でも、購入できるものはすべて明日手に入れようと硬い決心をするのであった。そして、明日は朝からグッズの列に並ぶ為、いつもより早く寝ることにした。布団に入ろうとした時、ふと今までasamiの事で頭がいっぱいだったkenだったが、急にsayuとの約束の事を思いだしたのであった。

第5話
外は、雨ではなく雪が降っていてとても寒い夜。kenは、いつものようにネット喫茶に通っていた。目的は一つ、そうM女のツアー初日を落とすためだ。sayuとの約束いやasamiの笑顔を近くで観る為に必死で頑張るがなかなか会心の一撃で落ちない。やはり、こんなに人生甘くはないなと思いながら・・・。今日もだめかと諦め、また明日があるさと思いながら寒い夜の雪の中を一人さびしく歩いて帰るkenであった。家に着くと、温かいコーヒーを飲みながら恒例になりつつあった会場でasamiに渡す手紙を書くことにした。その時ばかりは、さすがにsayuの事は忘れasamiの事で夢中になれる自分がいた。以前は当たり前の事だったのになと・・・・。

第4話
ken「そう言えば、もうすぐ春ツアーの初日ですね」
sayu「うん」可愛くうなずく
ken「日曜日は行く予定なので・・・頑張ってください」
sayu「有難う(笑顔)」
  「でも・・・土曜の初日は来ないの・・・sayu悲しいな・・・」
ken「本当は行きたいけどね」
sayu「なら決まりね。私に逢いにきてニャン〜約束だよ」
kenは、そんな無邪気なsayuの姿に思わず、「うん」と答えてしまった。
sayuは、「わーーい、やったーー!」と大騒ぎし
sayu「その時傘返すからライブ終わったら待っててね。携帯に電話するから・・・」
ken「携帯持ってないけど・・・」
sayu「うっそーー!そしたら公衆電話にTELするね(笑)」
  「冗談よ、そしたらまた電話してね、待ってるから・・・」
  「そんなkenクン可愛いニャン」
kenは、そんなsayuこそ可愛いニャンと思いながら「うん」とうなずいた。
すると、sayuは「信じることにするは〜3月5日〜」と無邪気に歌いながら電話を切った。
kenは、電話を切ると一瞬にして現実世界に戻された。行くと約束したはいいけど、チケットもないしと思いながら、青ジャーのままネット喫茶に直行した。だって、しょうがない・・オクで落とそう。しかし、初日とあって相場はかなり高い。でも、出来る限り頑張ろうと思っていたkenは、asamiのとびっきりの笑顔が見たいというのがやっぱり本音だったのだ。

第3話
kenは、公衆電話BOXに着くといつものようにポケットから大量の10円玉を取り出し電話を掛けた。10回程呼び出し音が鳴るがなかなかでない。やはり悪戯かと切ろうとした瞬間、受話器から少女の声で「もしもし・・・」と小さな声が聞こえた。相手が、公衆電話の為か相当警戒しているようだ。
ken「手紙をもらったんですが・・・」
sayu「kenさんですか?」
ken「はい」
sayu「私はsayuです。この前は、傘有難うございました」
少し話をしたが確かに声を聞くと、いつもCDで聴いているsayuの声に間違いない。すると
sayu「いつもライブに来るんですか?」
急に話の内容が変わった。
ken「行ける時は・・・。本当にM女のsayuさんですか?」
kenは、思わず聞いてしまった。
sayu「本当ですよ。ビックリしましたよね」
ken「えー、まあー」
sayu「kenさんってasamiちゃんの大FANなんですよね?」
sayuは、この前のライブでkenが必死にasamiを応援しているところを見ていたのだ。
kenは、そこぞとばかりに張り切って大きく「ハイ!」と答えた。
sayu「やっぱり・・・」
sayuは、少し悲しげな声で言い長い沈黙がながれた。kenは、慌てて
ken「でもsayuさんも大好きですよ。本当に・・・。特に決めポーズのうさちゃんピースなんかとっても可愛いいしね」
sayu「やったー」
とても、無邪気に喜ぶsayuの声を聞いたkenはなんて純粋な子だなとまたしてもsayuに少しひかれるのであった。

第2話
早いもので、明日からは3月。横浜でのライブから一ヶ月が経とうとしていた。kenは、一週間後から始まるM女の春ツアー初日戸田の公演を楽しみに今日も帰宅した。今日は、月末ともあって仕事も忙しくかなり疲れきっている様子だ。いつものように郵便ポストのチェックを行うと一通の郵便が来ていて宛名には、sayuとだけ書いてあった。kenは、一瞬怪しんだ後封を開けて目を通すと心臓が止まる程驚いた。内容は、私はM女のsayuで一ヶ月前に傘を借りたお礼が言いたくて傘に書かれていた住所と名前の所に手紙を送った事が記されていたのだ。kenは、時間が経つにつれより一層に怪しんだ。確かに一ヶ月前に傘は貸したが、その少女がまさかsayuだったとは到底思えない。恐らく、自分が最近sayuに興味を持ち始めた事に対する知人の悪戯か・・・。手紙の最後には、直接お礼が言いたいということで携帯の番号が書かれていた。kenは、その時今話題の悪徳セールかと確信しつついつものように放置しようと思った瞬間、突然何かに襲われたかのように電話を掛けなくてはという気持ちになったのである。きっと、sayu本人からだという強烈なビームを感じて・・・。するとkenは、急いで近くの公衆電話BOXに走り出したのだ。

主人公は、ごく普通の27歳のサラリーマンである。ふとしたことから始まった究極の恋愛物語のスタートです。
第1話
それは、2005年1月末日のことである。kenは、大FANのアイドルグループM女のライブを見に横浜アリーナに行くところだ。その日は、朝からどしゃぶりの雨でとても寒い日でした。kenは、会場に向かう途中で後ろから物凄い勢いで走ってくる少女とぶつかった。少女は、傘もささずびしょ濡れになりながら「すいません」と謝りまた急いで走り出そうとした。kenは、すかさず「良かったらこの傘使いますか?」と言い傘を差し出した。少女は、まるでウサギのような優しい笑顔で「ありがとうございます」と言って走り出した。するとちょっと行ったところでその少女は、また人とぶつかりkenはなんておっちょこちょいな子だなと思ったのである。そんな事もあったが時間はあっという間にliveのスタート時間になりkenはいつものように、大FANのasamiの応援を必死にしていた。今日は、なんと3列と良席でいつも以上に頑張っていたが、ふと目の前にとっびきりの笑顔でこちらを見ているsayuの姿があった。kenは、まだその時すでに始まっていた究極の物語のこもも知らずに・・・。