第13話
ついにライブがスタートした。kenは、2列目のセンターという非常においしい席だった。会場の造り的にステージとの距離もさほどなく、手を伸ばせば届きそうなくらいだ。この位置から観るライブにkenは、こんなに見えすぎてしまって良いのだろうかと最初は戸惑っていた。kenは、sayuとの約束通りsayuの応援を頑張るのだった。しかし、真正面に来ても何の反応もなくkenは不思議に思う。その時kenは、昨日の車中に一瞬でもasamiの応援をしたいと思った事をエスパーsayuにバレたのではないかと思う。また、kenは心の中で謝るが今日のsayuはいっこうに全くの反応がない。kenはだんだんとこんなに美味しい席で観ているのに窮屈な気持ちになってきた。そんなライブの中盤に差し掛かった時にasamiがkenの存在に気づき手を振ってきた。kenは、一体どういったつもりなのかとっても気になる。今すぐにでもasamiの応援をしたいと強く思うのではあったが、kenは今日はsayuとの約束があるから必死にこらえるのであった。asamiは、とっても心の優しい人であるがゆえkenとsayuとの重苦しい空気を感じ取ったのである。MCの時にasamiがkanの真正面に来て、手話で話しかけてきた。以前kenは、FANレターに手話に興味があると書いていたのだ。そして、MCの間にkenとasamiの二人は暗号での会話が始まったのである。